循環器内科とは
循環器とは、ポンプ機能を持つ心臓やその通り道である血管など、血液を循環させるシステムに密接にかかわる臓器の事を指します。循環器内科は、主に心臓や血管の障害を診る診療科です。具体的には狭心症や心筋梗塞、心不全、心臓弁膜症、不整脈などの心臓疾患と、動脈硬化、頸動脈狭窄、動脈瘤、静脈瘤、血栓症などの血管疾患が挙げられます。また、それらの主な原因となる生活習慣病の治療も専門となります。
循環器疾患は自覚症状に乏しく、症状を自覚する頃には病状が進行し急激に悪化することがよくあります。当院では血圧やコレステロール、糖尿病や運動、禁煙などの生活習慣を総合的に管理しつつ、血液検査、心臓エコー、頸動脈/下肢血管エコー、動脈硬化検査(ABI/CAVI)などの検査を用いて心臓・血管疾患の早期発見、早期治療に日々努めています。
また、大きな病院で治療を受けて病状が安定した方の、慢性期の治療も行なっています。心不全や狭心症・心筋梗塞、不整脈などの循環器疾患は、手術や服薬治療で一度病気が安定しても5年、10年という長期間の経過の中で再発することが多いことが知られています。その予防のためには専門医による定期的な問診、検査によるきめ細かい診察が重要になります。当院では患者様の生活スタイルや既往症も考慮しながら、それぞれの方に合った診療を心がけております。
このような症状はありませんか?
- 動悸がする(胸がドキドキする)
- 脈が遅い・速い
- 脈が飛ぶ
- めまいや立ちくらみがある
- 失神した
- 横になって寝ると咳が出たり苦しくなる
- 顔や手、脚がむくんでいる
- だるい
- 尿量が少ない
- 坂道や階段を歩くと胸が苦しくなる
- 動くと息切れがする
- 胸が圧迫される
- のど元、奥歯、肩、左腕が痛くなる事がある
- 歩くと下肢が痛くなる、痺れる
- 指先が冷たい、色が変わっている
- いびき・無呼吸を指摘された
- 血圧が高い
- コレステロール値が高い
- 血糖値が高い
- 心雑音を指摘された
- レントゲン検査を受けた結果、心臓が大きいと指摘された
- 心電図異常を指摘された
など
循環器内科で扱う主な疾患
生活習慣病
心臓疾患
- 虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)
- 心不全
- 心臓弁膜症
- 不整脈
- 心筋症(拡張型・肥大型、その他)
生活習慣病(高血圧症、脂質異常症、糖尿病)
生活習慣病はその名の通り、生活習慣の蓄積により血圧や血液中のコレステロール、糖が多くなる事で引き起こされる疾患です。運動不足や塩分、脂質、糖質の摂取過多が原因になります。バランスのよい食事と適度な運動を心がけましょう。また、定期的な血圧の自己測定と体重測定はご自身の体調管理に有効ですので是非試してみてください。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠中に長い時間呼吸が止まる疾患です。CPAPと言う器具を鼻のみ、または口と鼻の両方を覆うように装着して寝るのが一般的な治療法になります。治療を行わないと心血管疾患、脳卒中などに強く関係する事が知られています。
原因は肥満や心不全の合併、鼻腔の変形や扁桃腺の腫大などが挙げられます。当院では耳鼻科と循環器内科の医師がおり、導入前にそれぞれの科での診察、評価を行い、治療の適応を決めることができます。
動脈硬化症
動脈の壁が硬くなり、働きが悪くなる状況を動脈硬化と言います。血管は臓器の一つなので歳を重ねると共に傷んでいき、加齢性の動脈硬化は誰にでも起こります。しかし病的に動脈硬化が進行した場合、特に内膜にコレステロールが溜まる事で起こるアテローム性動脈硬化は、頻度が最も高く心筋梗塞や脳梗塞の原因になります。日本人の5人に1人は動脈硬化による心疾患、脳血管疾患で亡くなる(平成29年人口動態統計の概況(厚生労働省))、世界の死因の30%がアテローム性動脈硬化による、などのデータもあります。
動脈硬化の進行を予防するには、まずは適度な運動と塩分や脂質を抑えた食事制限を行いましょう。それでもデータが改善しない時はそれぞれの生活習慣病に対する内服加療が必要です。
動脈硬化を調べる検査
虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)
心臓は主に筋肉(心筋)でできており、収縮して血液を全身へ送り出すポンプとして働いています。この働きに欠かせないエネルギー(酸素・栄養)を運んでいるのが、冠動脈という血管で、大動脈から枝分かれして心臓の表面を3本走行しています。この冠動脈に動脈硬化が起こり狭窄や閉塞を起こし、心筋への血液の流れが悪くなる病気が『狭心症』と『心筋梗塞』であり、それらを合わせて『虚血性心疾患』と言います。
日本でも高齢化が進むにつれて患者人口が増加しており、癌、脳卒中と合わせて日本人の3大死因の一つとされています。
狭心症
心臓から大動脈に血液が送り出されて、それが枝分かれして全身の臓器に酸素や栄養を供給しています。その中で最初に枝分かれした動脈が冠動脈で心臓に血液を送る働きをしています。狭心症は、冠動脈が狭くなり血流の流れが悪くなるために、心臓が酸素不足となって起こります。一般的に動脈硬化によって起こり、安静にしている時には起こりづらいです。最初は心臓に負担がかかりやすい坂道や階段を歩くと胸が苦しくなり休むとよくなる、といった症状が認められます。平地でも苦しくなる、歩ける距離が短くなった、など症状が進行すると心筋梗塞を発症するリスクが高くなります。他に、主に夜間の寝ている時に起こりやすい狭心症もあります。
狭心症は症状が落ち着いている時は検査で異常が見つかりづらく、診断が大変困難な疾患です。その為、診察では問診がとても重要になります。心不全や心筋梗塞に至る前に正確な診断を受け、適切なタイミングで治療を受けられるようにしましょう。治療は当院で内服加療を行う事もありますが、専門的な検査や治療が必要と判断した場合には循環器の専門病院をご紹介する事もあります。その場合、血管カテーテル治療や冠動脈バイパス術が必要になる場合もあります。
狭心症に多い症状
- 坂道や階段を歩くと胸が苦しくなる、息が切れる
- 背中が痛い
- 胸が圧迫される
- 奥歯や肩、左腕が痛くなる事がある
狭心症を調べる検査
- 血液検査(トロポニン迅速検査を含む)
- 心電図
- 24時間心電図(ホルター心電図)
- 心エコー
心筋梗塞
狭心症で冠動脈が狭くなり血流が滞る病態に対して、心筋梗塞とは冠動脈が詰まって血液の流れがなくなり、心筋が酸素不足で壊死してしまう疾患です。そのため、発症すると激しい胸の痛みや冷や汗、呼吸困難、嘔吐などが長時間持続する事が多いです。致死率が大変高い疾患で、適切な治療を行わなかった場合の死亡率は30~50%と言われています。また、治療が遅れても死亡率が上昇します。当院では近隣の専門病院と連携をとりつつ、心筋梗塞が疑われた場合の救急搬送や退院した後の患者様を外来で専門的に診察しています。
虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)の危険因子
- 虚血性心疾患の家族歴
- 喫煙
- 高血圧
- 脂質異常症
- 糖尿病
- 肥満
- 加齢(男性45歳以上、女性55歳以上)
心不全
心不全とは『心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気』とされています。心臓のポンプ機能に不調が生じ、血液の循環が悪くなるために起こります。息切れ、横になると苦しい、手脚のむくみ、尿量が少ないなどの症状がみられます。治療は安静、服薬治療に加えて酸素投与、点滴加療を行う事もあります。治療が遅れて重症化すると心不全治療に対応している専門病院へ救急搬送が必要な場合もあります。症状があるのにご自宅で我慢していたり、市販薬を試している間に悪化してしまう事も少なくありません。心不全を疑った時点で早めに医療機関を受診し、適切な診断、治療を受ける事をお勧めします。
また、心不全は症状が改善しても、完治することはほぼなく、特に再発が多い疾患です。当院では心不全が再発しないよう、患者様それぞれに合った生活指導や服薬管理を長期的に行なっていきます。また近隣の専門病院と連携をとり、緊急時のご紹介や、心不全治療の退院した患者様の外来治療を専門的に行なっています。
心不全の際に行う検査
- 採血
- 腹部レントゲン
- 心電図
- 心エコー
心臓弁膜症
心房と心室、心室と動脈の間には、ドアのような働きを持つ逆流防止「弁」があります。弁は拍動とのタイミングに合わせて、血液が逆流しないよう動いています。心臓弁膜症とは、この弁が正常に動かなくなる疾患です。
主な原因としては、加齢や動脈硬化、不整脈、リウマチ熱の後遺症、先天的な形態異常が挙げられます。
進行すると弁の働きがさらに悪くなることで心臓への負担が大きくなり、心不全(息切れ、むくみ、倦怠感など)や狭心症を引き起こすようになります。
不整脈
心臓の筋肉の収縮は、右心房にある洞房結節(洞結節)から電気が発せられて、心臓の筋肉を刺激することで起こります。電気は洞房結節で管理されており、必要に応じて心拍が速くなったり、遅くなったりします。また、電気信号が通る道も決まっています。不整脈とは洞房結節の機能が悪くなったり、洞房結節以外の場所から電気刺激が起こり、心臓が収縮するリズムが不整になる状態です。脈が飛ぶ、動悸、息切れ、めまいやふらつきなどの症状を認める事があります。原因には心臓疾患では冠動脈疾患や心不全、心臓以外では甲状腺異常や肺の疾患、加齢や遺伝、ストレス、睡眠不足などが、不整脈のリスクとなります。 治療が不要な不整脈も多いですが、心不全や脳梗塞の原因となるものや、命にかかわるものもあります。
閉塞性動脈硬化症
動脈硬化によって、下肢の動脈の血流が悪くなる病気です。タバコを吸う方や60歳以上の男性に多いです。症状では足の冷えや痛み、しびれ、潰瘍、壊死がみられます。特に歩くと太ももやふくらはぎが痛くなり、休むと改善する『間欠性跛行』という症状が特徴的ですが、この症状は腰椎すべり症や脊柱管狭窄症でも見られます。そのため整形外科を受診する方が多く、結果見逃される事が大変多いです。しかし、心筋梗塞や脳梗塞など動脈硬化が原因の疾患との合併率が高く、予後が悪い疾患としても知られており、重症例の予後は5年生存率50%以下とのデータもあります。喫煙歴や糖尿病などの生活習慣病を持病としていて、整形外科で治療しても足の痛みの症状が改善しない方はこの疾患の精密検査をする事をお勧めします。