もの忘れ外来について
もの忘れ外来には『忘れやすくなった』、『物を失くす事が増えた』と感じたり、周囲の人から『性格が変わった』、『ぼんやり過ごしている事が多くなった』、『趣味への興味が薄れた』などと指摘されたりして、認知症が心配になり来院される方が多くいらっしゃいます。当院では通常の内科外来での診察に加え、隔週土曜日に認知症専門医が外来を行っております(第2、第4土曜日 午前)。丁寧にご本人やご家族からお話を伺いながら診察を行います。気軽にご相談ください。
認知症の症状
人間誰しも歳を重ねると「もの忘れ」が多くなります。しかし認知症の方のもの忘れは、老化によるもの忘れと異なります。老化によるもの忘れの特徴として、忘れた事を覚えておりヒントを与えると思い出せるのに対し、認知症によるもの忘れの特徴には、忘れた事を自覚せず、ヒントを与えても思い出せない、体験した内容すべてを忘れる、などがあります。また、老化によるもの忘れでは、日常生活に大きな支障をきたしません。一方、認知症では、記憶障害などが進行し、理解力や判断力などが低下することによって、日常生活にも支障をきたしてしまいます。ご本人またはご家族に、以下のような症状が現れた際は、もの忘れ外来へ受診することを推奨します。
- もの忘れが増えている
- 判断力が低下している
- 見当識障害(何時なのか、自分が何処にいるのか分からなくなる状態)がある
- 妄想や幻覚、徘徊、不安などが見られる
- 以前当たり前にできていた事が出来なくなる(家電の使い方、料理や掃除の手順が分からなくなる、など)
認知症の種類
認知症の種類は多岐にわたりますが、その中でも代表的な疾患は「4大認知症」と言われています。4大認知症には「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」が挙げられます。
アルツハイマー型認知症
アミロイドβ蓄積による老人斑と、タウ蛋白蓄積による神経原線維変化をきたしながら、脳神経細胞が障害されてしまい、認知症を呈する病気です。最も患者数が多い認知症で、認知症全体の40~60%程度を占めると言われています。頭部画像を撮影すると、海馬やその周りに脳の萎縮があることが分かります。男性より、女性に多くみられる認知症です。もの忘れから始まって徐々に進行するという特徴を持っており、根治させる治療法は未だに確立されていません。しかし、薬で脳神経活性を持ち上げ、症状の進行スピードを遅らせる事が出来る可能性のある認知症です。
脳血管性認知症
脳出血やくも膜下出血、脳梗塞などによって発症する認知症です。女性よりも男性に多くみられます。小さな脳梗塞の蓄積によっておこる場合と、大きな脳血管障害により起こる場合があります。一部の認知機能は保たれる、「まだら認知症」を呈する事があります。
症状がゆっくり進行するケースもあれば急速に進むケースもありますが、階段状にすすむ事が特徴的です。また、アルツハイマー型と合併する混合型認知症を呈する方もいらっしゃいます。生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症など)の治療で、発症を予防したり進行を遅らせたりすることが大切と考えられます。
レビー小体型認知症
異常なたんぱく質であるαシヌクレインが蓄積し、レビー小体を形成しながら、神経細胞障害を呈する認知症です。もの忘れの他に、あるはずのないものが鮮明に見える(幻視)、体が硬くなり動きづらくなる(パーキンソン症状)、レム睡眠行動異常などの症状を生じる事があります。また、症状の変動が大きいこともしばしばあります。一般的に、アルツハイマー型認知症より進行が早い事が多いですが、根治的な治療は確立されておりません。対症療法として、薬物治療や理学療法が行われます。
前頭側頭型認知症
前頭葉と側頭葉を中心とする神経細胞が障害される認知症です。画像診断を行うと、前頭葉と側頭葉に脳の萎縮が見られます。前頭葉は情動・意欲・注意などに関連しており、側頭葉は言語に関連した領域です。どの部位が障害されるかにより異なる症状を呈しますが、主に前頭葉の障害により、「自発性が低下する」、「同じ行動を繰り返す」、「行動が変化する(元の性格とはかけ離れた行動、反社会的な言動など)」などが生じ、側頭葉の障害により、言語障害(物の名前が出てこない、言葉の意味が理解できなくなる、発言の回数が減る)が見られます。
検査について
まず、問診や心理テストを行って、認知機能障害の有無を調べます。そこから、診察や血液、脳の画像検査などを行い、原因を探っていきます。またご家族の方には、日常生活の自立度や生活におけるトラブル、介護負担度、福祉サービスの利用状況などの調査をお願いしております。
頭部MRIによる評価が必要な場合は、近隣の基幹病院のMRI予約(外来受診不要)を当院で行います。検査結果のご説明も当院で行う事が可能です。
治療について
多くの認知症患者さんにおいて、進行してしまった記憶障害や判断力の低下を元に戻す治療法は、残念ながら確立されていません。しかし、アルツハイマー型認知症など一部の認知症は、薬物治療で症状の進行を一部遅らせる事を考慮できます。また、正常圧水頭症や甲状腺機能低下症などの診断がついた場合には、治療につなげる事が出来ます。その他、残存している機能をできるだけ維持させるケア・リハビリ・介護も有効とされています。物忘れを指摘されたら、あるいは身近な方の物忘れが気になりましたら、お気軽に当院までご相談ください。