心不全について
心臓は24時間365日休まず、全身へ血液を供給するポンプの役割を持っています。様々な理由で心臓のポンプ機能が低下して血液の循環が悪くなる状態を心不全と言います。心不全とは病名ではなく、心筋梗塞や弁膜症などの原因によって起こる症候群、と認識して下さい。
心不全の原因
冠動脈(心臓の筋肉に栄養を送る血管)の血流が悪くなる虚血性心疾患、動脈硬化や塩分の過剰摂取などによって起こる高血圧、心臓の部屋を分割している逆流防止弁が障害される弁膜症、心臓の筋肉に異常が生じる心筋症、拍動のリズムが乱れる不整脈、先天的な心臓の疾患など、様々な疾患が引き金となって発症します。
心不全の症状
坂道・階段で息切れする、疲れやすくなると言った症状が起こりやすくなります。また、尿量が減る、足のむくみ、体重増加(1週間で2~3kg増える)といった症状も現れます。体内で血液が滞留する「うっ血」が進行すると、食欲低下やお腹が張る、起坐呼吸(きざこきゅう:呼吸が苦しくて横になって眠れない)などの症状が出現します。
特に息切れと足のむくみはよく見かける初期症状ですので、こうした症状がありましたらご相談ください。
心不全の治療
基本的には安静や食事指導、利尿剤を中心とした内服加療、必要に応じて酸素投与や点滴加療を行います。重症の方は生命の危機に陥る事もあるため、専門病院への救急搬送が必要になります。
また心不全は症状が改善しても、完治することはほぼない疾患です。再発することも特に多く、再発の毎に予後が悪くなります。そのため心不全症状が改善した後も服薬治療、生活管理はとても重要になります。
生活療法では過度な動作は避け適度な運動を行う、塩分制限を行う、自宅血圧を確認する、など日常の中でご自身で管理することが中心になります。最初は行動制限も必要になることもありますが、生活内容を適宜見直しながら徐々に行動範囲やできることを増やしていきます。
心不全の内服治療は従来からレニン・アンギオテンシン阻害剤やβ遮断薬が中心に使用されてきましたが、近年、心不全の予後に大きくかかわる新薬が次々と開発され、使用できるようになっています。例を挙げると利尿剤のトルバプタン、心不全改善薬のサクビトリルバルサルタン、ベルイシグアト、糖尿病薬のSGLT2阻害剤など、心不全の死亡率や入院を減らしたり、腎臓の機能に影響を与えるエビデンスをもつ薬剤であり、以前と比べると治療の選択肢の幅が大きく広がっています。
当院では患者様それぞれの生活スタイルや併存疾患も考慮し、最適な生活指導と内服薬を調整していきます。
心不全になったら気をつけること
心不全は回復と悪化を何度も繰り返しながら、進行していく疾患です。再発を防ぐには、以下の3つを守ることが重要です。
- 必ず医師の指示通りに従って、服薬を続ける(心不全が悪化する原因の中で最も多いのは、「服薬の中断」です)
- 1日6g未満を目安に、塩分を摂取する(塩分を取り過ぎると体内の血液量が増加してしまい、心臓への負担が大きくなります)
- 血圧や体重を毎日チェックする。