生活習慣病とは
食事や運動、喫煙、飲酒、休養などの習慣が、発症・進行に大きく関わっている疾患の総称です。昔は「成人病」と呼ばれており、加齢とともに発症・進行する疾患とされていました。しかし、近年になってから、飲酒や喫煙の習慣、運動不足、不規則な生活リズムなど、幼い頃からの生活習慣が引き金となって発症すると判明し、「生活習慣病」という名称が付くようになりました。
代表的な疾患としては、高血圧や糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症が挙げられます。いずれも過食または偏食、運動不足、お酒の飲みすぎ、タバコの吸いすぎなどの不摂生によって発症する、慢性疾患です。
このような方は要注意です
- 健康診断や人間ドックなどで、異常を指摘された
- タバコをよく吸う
- お酒をよく飲む
- 運動を習慣化していない
- ストレスフルな生活を送っている
- 睡眠時間が短い
- 脂っこい料理をよく食べている
- 味が濃い料理を好む、塩分を摂りすぎてしまう
- お腹いっぱいになるまで食べてしまう
- 血圧を測ってみると、140以上あることが多い
- 20歳の頃と比べて、体重がかなり増えた
など
高血圧
血圧が一定値を超えてしまい、それが慢性的に続いている状態です。放置すると動脈硬化が進行し脳新血管疾患の発症リスクが上がるため、きちんと自分の血圧を知り、高ければ治療を受けるようにしましょう。高血圧の基準値は日本高血圧学会から2019年のガイドラインで血圧の基準値や治療目標値が示されています。健康な成人の場合、正常の血圧収縮期血圧は120mmHg未満、拡張期血圧は80mmHg未満です。そして降圧目標値も年齢によって違い、健康な75歳未満の方は130 /80mmHg 未満、75歳以上の方は140 /90mmHg未満とされています。しかし、ここに記載している数値はごく一部で、他の生活習慣病を合併していたり、心臓や脳血管疾患を合併されている方はもう少し厳しい基準値で管理する必要があります。
まずはご自宅で可能な範囲での血圧測定を行い、血圧手帳に記載しましょう。基本的には起床後1時間以内と就寝前に測定することが望ましいですが、持続しなければ意味がないので、負担がかからない可能な範囲で測定してみてください。その上で収縮期血圧が「130以上」になることが多い方は、一度受診しましょう。
高血圧の原因
高血圧は大きく分けると「本態性高血圧」と「二次性高血圧」があり、原因はそれぞれ異なります。
(1)本態性高血圧の原因
日本人の半数以上がこの高血圧です。根本的な原因ははっきりと解明されていませんが、塩分の過剰摂取やストレス、運動不足、肥満、喫煙といった生活習慣、加齢、遺伝的な要因などがリスク因子だと考えられています。
(2)二次性高血圧の原因
何らかの疾患が原因で生じる高血圧のことです。主な原因としては、睡眠時無呼吸症候群、腎実質性高血圧、腎血管性高血圧、遺伝性高血圧、内分泌性高血圧(甲状腺機能異常、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫、クッシング症候群など)、薬剤誘発性高血圧などが挙げられます。
高血圧の治療
高血圧が続くと動脈硬化が進みやすくなります。心筋梗塞や脳卒中といった合併症のリスクを高めないよう、適切な治療を受けることが大切です。当院ではまず最初に生活リズムや食生活、運動の回数など生活について問診を行います。そこで食事や運動、生活習慣について見直し、薬物治療が必要と判断した場合は患者様とよく相談の上で薬剤を開始します。ほとんどの場合、服薬を続けることで、適正な血圧を維持させることができます。
二次性高血圧の場合は、原因となる疾患の治療を優先して行います。近年では降圧薬を3種類以上飲んでいるにも関わらず、目標の血圧まで下がらない難治性高血圧が増えています。この場合、二次性高血圧が隠れている可能性が高いため、心当たりのある方は医師に相談しましょう。
脂質異常症
脂質(コレステロール)にはLDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪があります。LDLコレステロールは悪玉コレステロールとも呼ばれ、血管の壁に溜まりアテローム性動脈硬化の原因となります。HDLコレステロールは善玉コレステロールと言い、血管の壁に蓄積したコレステロールを回収し肝臓に戻す働きをしています。LDLは動脈硬化を促すので悪玉、それに対してHDLは動脈硬化を抑制する働きをするため善玉コレステロールと言うわけです。また、中性脂肪も動脈硬化や肥満の原因になります。
LDLコレステロールや中性脂肪が基準値より高い、またはHDLコレステロールが基準値より低い状態を脂質異常症と言います。具体的にはLDL 140mg /dL未満、中性脂肪150mg /dL 未満、HDL 40mg/dL 以上が基準値になります。また、LDLとHDLのバランスが重要と言われています。数値が正常でもLDLとHDLの比率(L/H比)が2.0を超えると血管内にコレステロールの蓄積を超え、2.5を超えると心筋梗塞のリスクが上昇すると言われています。そのため、特に持病がない方は2.0以下、高血圧や糖尿病の持病がある方や虚血性心疾患の既往がある方は1.5以下を目標にしましょう。
脂質異常症と合併症
脂質異常症は動脈硬化の強い危険因子になります。特にアテローム性動脈硬化の原因となり、狭心症や心筋梗塞など虚血性心疾患にかかりやすくなります。他にも中性脂肪が高いと、動脈硬化の他に肥満症や急性膵炎を発症する恐れもあります。
脂質異常症の治療
治療の基本は運動と食事療法です。LDLコレステロールは揚げ物やお肉で上昇する事が知られています。中性脂肪はそれらに加えて糖質の摂りすぎも関係します。またHDLコレステロールを上げるには青魚の摂取が有効と言われています。これらの食事内容に気を付けたバランスの取れた食事を摂って、適度な運動を心がけましょう。
糖尿病
糖尿病とは、何らかの理由でブドウ糖をうまく細胞内に取り込めなくなり、血中のブドウ糖の値(血糖値)が高くなり、様々な合併症を起こす病気です。通常では、食事やおやつを食べた後に血糖値は上昇します。すると膵臓からインスリンが分泌されて、各臓器の細胞にブドウ糖を吸収し、グリコーゲンや中性脂肪の形で体内にエネルギーとして貯蔵します。しかし、糖尿病ではインスリンの分泌量の減少や、インスリンの効きが悪くなり、血糖値が高い状態が続いてしまうのです。
糖尿病は1型と2型の2種類に分かれていて、多いのは2型糖尿病です。2型糖尿病の主な原因としては、加齢や遺伝、暴飲暴食、ストレス、運動不足、肥満などがあります。まずは食事と運動の習慣を見直してから、治療を行っていきます。合併症を発症する前に、早期治療に取り組むことが重要です。
糖尿病の種類
1型糖尿病
インスリンを分泌する細胞が壊されてしまい、インスリンの分泌量が不足してしまう疾患です。主な原因として、遺伝やウイルスの感染などが挙げられます。
2型糖尿病
主に運動不足や糖質の過剰摂取などの不摂生、加齢などが原因で発症・進行する疾患です。
その他
遺伝子異常やウイルス感染、内分泌疾患、膵疾患などの疾患、薬剤・化学物質などによってかかる二次性糖尿病もあります。また、妊娠中の糖代謝異常で発症する妊娠糖尿病は、出産すると治りますが、将来の糖尿病の発症リスクが高くなると言われています。
糖尿病の合併症
糖尿病は動脈硬化を進行させて血管の狭窄・閉塞のリスクを上げます。そのため、心筋梗塞や脳卒中などの脳血管疾患、閉塞性動脈硬化症などの発症リスクが上昇します。
さらに、糖尿病になると毛細血管が障害されるため、様々な合併症にかかりやすくなります。特に糖尿病網膜症・糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症は、「糖尿病の三大合併症」と言われている疾患で、最悪の場合、失明や足の壊死、重篤な腎機能障害などに至ります。
メタボリックシンドローム
内臓肥満に加えて高血圧や糖尿病、脂質異常症を合併している症候群です。動脈硬化の進展には肥満に加え高血圧などの生活習慣病や喫煙が関与していることが知られています。これらの疾患はそれぞれ単独でもリスクにはなりますが、組み合わさることで動脈硬化がさらに進行します。日本人の死因は心血管疾患が第2位、脳卒中が4位と動脈硬化が原因の疾患が上位を占めており、これらの発症が増加するというわけです。
メタボリックシンドロームの診断には、腹囲の他に血圧、血糖、脂質異常などの項目が含まれており、腹囲+もう2項目を満たすとメタボリックシンドロームの診断になります。
メタボリックシンドロームと診断されると、糖尿病を発症するリスク3倍、心血管疾患を発症するまたはそれにより命を落とすリスクも3倍と言われています。
高尿酸血症(痛風)
血中の尿酸値が正常値よりも、高くなってしまう状態です。過剰になった尿酸は体内で溜まると、結晶化して関節へ蓄積します。この結晶が原因で、激しい痛み(痛風発作)や発赤、腫れなどの炎症反応が起こるようになります。
尿酸はプリン体によって生成されるため、進行を食い止めるには、プリン体が多く含まれた飲食物を控える必要があります。
また、一気に尿酸値を下げると、痛風発作が起こりやすくなります。そのため、薬の投与は慎重に検討する必要があります。
高尿酸血症(痛風)の症状
関節が赤く腫れ上がり、激しい痛みを伴う「痛風発作」が代表的な症状です。初期段階は、尿酸が蓄積されやすい手足の関節に表れやすいとされています。最も現れやすい部位は、足の親指の付け根部分です。痛風発作は唐突に起こり、初めは一時的に痛みが収まるのですが、突然また再発し、次第に慢性化する特徴を持っています。また尿酸値が高い状態を放置してしまうと、痛風だけではなく尿路結石症や慢性腎臓病といった疾患の発症リスクも上昇しやすくなります。