ピロリ菌とは
ピロリ菌とは、胃の粘膜に生息している細菌です。正式名称はヘリコバクター・ピロリといい、らせん状の形をしています。
胃には、強酸性の胃酸があるため、通常、細菌は胃の中で生きていけません。しかしピロリ菌は「ウレアーゼ」という酵素を生成して胃酸と中和することで、自身の周りをアルカリ性の環境にしているため、胃の中でも生存できるのです。
ピロリ菌の感染経路は未だにはっきりと解明されていませんが、経口感染(口から感染する)が大部分であると考えられています。特に免疫力が弱い5、6歳以下の幼児期に感染します。
ピロリ菌と関係する疾患
ピロリ菌に感染していても無症状の事が多いです。しかし、胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、MALTリンパ腫、胃がんの発症に関与するためWHO(世界保健機構)ではピロリ菌は発癌因子と認定しています。
ピロリ菌が侵入すると胃に炎症が起こり、感染が長期化すると慢性胃炎を引き起こしてしまいます。この慢性胃炎は「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」といい、胃粘膜の萎縮や腸上皮化生(ちょうじょうひかせい:胃の粘膜が腸の粘膜のようになる)が起こります。このヘリコバクター・ピロリ感染胃炎は、胃・十二指腸潰瘍の発症と再発にも、このピロリ菌の感染が関与していて、実際、潰瘍を患っている患者様のピロリ菌感染率は80~90%だと報告されています。他にも、胃がんを発症する確率が高く、ピロリ菌現感染の方は未感染の方の15倍ものリスクがあると言われています。ピロリ菌の除菌をすればリスクは1/3程度に下がりますが、それでも胃がんのリスクは高いです。
ピロリ菌の除菌を行った方がいい疾患
日本人のピロリ菌感染者数は約3,500万人だと言われています。しかしピロリ菌感染者のほとんどは、感染していることに気付かないまま日常生活を送っています。なお日本ヘリコバクター学会のガイドラインでは、ピロリ菌感染者全員にはぜひ、除菌療法を受けるよう強く推奨されています。
特に下記に当てはまっている方は、除菌療法を受けることをお勧めします。
- 胃・十二指腸潰瘍の方
- 「ピロリ菌による胃炎がある」と胃カメラ検査で指摘された方
- 胃MALTリンパ種の方
- 特発性血小板減少性紫斑病の方
- 早期胃がんの内視鏡的治療を受けた方
特に胃がんを予防するにおいて、ピロリ菌の除菌治療はかなり有効だと言われています。早期胃がんの治療を受けた後にピロリ菌の除菌治療を受けた方は、治療を受けなかった方と比べて、新しい胃がんを発症する確率は低いと指摘されています。
検査法
ピロリ菌の感染検査は、「内視鏡を使う検査」と「内視鏡を使わない検査」の二種類に分けられます。
内視鏡を使う検査
迅速ウレアーゼ試験
ピロリ菌が持っている、尿素を分解するウレアーゼ酵素の働きを使った検査方法です。採った胃の組織の一部を、特殊な試薬に付着させ、ピロリ菌があるかどうかを確かめていきます。
培養法
胃粘膜を採ってすりつぶし、ピロリ菌が発育する環境で培養して調べる検査方法です。
組織鏡検査
胃粘膜を採って染色した後に、顕微鏡でピロリ菌がないかを調べる検査方法です。
内視鏡を使わない検査
尿素呼気試験
検査薬(13C-尿素)を服用した前と後の呼気を採取して、ピロリ菌のウレアーゼによって生成された二酸化炭素(13CO2)の量を測る検査方法です。一番精度が高いことから、現在よく活用されている検査として知られています。
抗体測定検査
ピロリ菌に感染した体内では、その菌に対する抗体が生成されます。血液や尿にある抗体を調べて診断をくだします。
糞便中抗原検査
便中に含まれているピロリ菌の抗原の有無を調べる検査です。
※検査を1つだけ行うと精度が低くなってしまうため、感染している可能性が高い場合は、複数の検査方法を組み合わせて診断します。
※検査によっては、内服薬や食事の有無で当日行う事ができないものがあります。
ピロリ菌の除菌療法
ヘリコバクター・ピロリ感染症の確定診断をくだされた方は、除菌治療を検討しましょう。除菌療法では、「胃酸の分泌を抑える薬」を1種類、「抗菌薬」を2種類処方します。この3つの薬を同時に1日2回、7日間飲み続けていきます。全ての治療が終わってから8週間ほど経過した後に、ピロリ菌が除菌できているかどうか、もう一度確認していきます。
除菌療法の成功率
用法・用量を守って正しく服用した場合、1回目の除菌療法の成功率は70〜80%といわれています。
一次除菌療法で除菌できなかった場合は、2種類の抗菌薬のうちの1種類を変えて、2回目の除菌療法を行います(二次除菌療法)。
一次除菌療法で失敗した場合でも、二次除菌療法をきちんと受けていけば、ほとんどの確率で除菌に成功すると言われています。
注意点
除菌療法を受ける前に
以下にあてはまる方は、除菌治療を受ける前に医師へ報告してください。
- 薬でアレルギー症状を起こしたことのある方
- ペニシリンなどの抗菌薬を飲んだ時に、重篤なアレルギー症状(ショックなど)を起こしたことがある方
除菌療法中の注意点
処方された薬は必ず、休まず飲み続けていきましょう。3剤を同時に1日2回、7日間脳供養を続けてください。自己判断で服用を止めてしまうと、除菌に失敗しやすいだけではなく、治療薬の耐性を持ったピロリ菌へ変わってしまう可能性が高まります。
なお、除菌療法を受けている間、飲酒は絶対にやめてください。
除菌療法中に起こりえる副作用
除菌療法の薬を服用すると、下痢や味覚異常、発疹を起こす可能性もあります。各症状に対する対処法は、下記の通りです。
軟便、軽い下痢などの消化器症状・味覚障害が現れた
自己判断で服用する量・回数を減らさずに、残りの薬を7日間まで全て飲み切ってください。ただし症状が重くなった場合は、医師又は薬剤師へご相談ください。
発熱や腹痛を伴う下痢、粘膜や血液が混ざっている下痢、発疹が出た
速やかに薬の服用を中止し、医師または薬剤師へお問い合わせください。
その以外の症状が現れて心配な時も、医師または薬剤師へご相談ください。